とくん

とくん

なにか聞こえる
鼓動が聞こえる

とくん
とくん
暖かな君の音
君の胸に耳を当てる
何か言ってるみたいだけど僕は聞かない
こうやっているだけで幸せだから












ある日…

そう、ある日。
僕は君の部屋にいた。

部屋に入った事は初めてじゃない。何度か入った事はあった。



僕は今、ベッドに腰掛けている。

君の部屋には椅子が一つしかないから、僕はベッドにこしかけていいたけど。

今日は君が傍に座っている。

僕に枝垂れかかって。

そして君は僕の耳にその唇を近づけ、囁く。

…………………?

 

 

 

 

そして僕の脳は沸騰した。

記憶が飛ぶ。

正確には、あまりにも突然であまりにも膨大な情報量で、僕の陳腐な脳の限界点をあっさり越えた。





蒼き夢魅し
〜不安と期待と求める心〜

Written by 野上まこと+PatientNo.324




「…ねぇ聞いてるの?馬鹿シンジ」

「え?」

どうやら妄想していたらしいシンジは自分の置かれている状況がいまいち飲み込めていなかった。

「シンジ、さあ早くしなさいよ」
「う…うん」




でも…なんでこんな事に?
チープな脳みそはあっという間に沸騰して爆発寸前

暖かな君の存在が僕を包む






僕を抱きしめてくれるその手は少し恥ずかしそうに

「ねぇ…私のこと好き?」

僕は言葉にせずに小さく肯く。
すると君は優しく抱きしめてくれた。









「シンジ、ムードよ、ムード」

そう言葉を紡ぐアスカは余裕の表情を浮かべている振りをする。前髪に隠れた額の端は既に汗だく。


「う…うん」
「じゃあ…良いわね?」

強張るアスカの頬の肉。自分がこれから何をしようとしているのか、頭で理解出来ても、身体が理解していない。
が、自分から言い出した以上、ここで引き返すなど、己のプライドが許さない。

「服…脱ぎなさいよ」

視線をあらぬ方向に向けたままでシンジに『命令』する。

「で、でも恥ずかしいよ」

当然の拒否。女性の前で裸になる習慣を持ち合わせているような変態ではなかった、彼は。

「あ、あたしだって恥ずかしいわよっ」

シンジの穿いているバミューダパンツに腕を伸ばし、強引に引きおろす。シンジも流石に顔面が真っ赤になって、何かに耐えている。
その下には真っ白な、染み一つないブリーフ。バミューダパンツを引き下ろした直後だけに間近でそれを観る羽目になってしまう。

沸騰する脳味噌。余熱で破裂する顔面の毛細血管。

トチ狂った命令を出す脳味噌の所為で骨髄は血液を大量に生産し、それを顔面に送りつづける…

そんな錯覚に陥るほどに、顔中が熱い。


「え、だって…あのさ、一つ、良いかな?」
「な、なによ」

逃げ出したい感情と、でも興味と年齢相応の生物としての本能と、恐怖心と克己心の間で鬩ぎ合う
辛うじて、前を手で隠し、滑りの悪い口を何とか動かす事にシンジは成功した。

「電気…消したいんだけど、ダメかな?」

「そ、そんなのあたりまえじゃないの」

アスカはシンジを反射的に叩きたくなる腕を辛うじて抑え、替わりに叫ぶ。

「じゃ、消すよ…っとっとう、わぁぁぁぁぁぁっ」
「へ?」
「っったたたた…ベッドから落っこちちゃった…」

ベッドの上だった事を忘れ、いや覚えていたのだが、素直に言う事を聞いてくれない体はその主を三文喜劇役者に仕立てる。

「はぁ…馬鹿ね…よっと、ほら、立ちなさいよ」
「ご、ゴメン…あはは…」
「もー、ムードもへったくれも…」
「…どうしたの、アスカ?」

気取り、飾った言葉を吐く所か今時どんな下らないコメディでもやらないようなボケを発揮するシンジに呆れ、あっという間に気分が醒めた思いがしたアスカであったが、

「し、シンジ…それ」

アスカはベッドの上で座っている。

シンジはブリーフ剥き出しのスタイルで床に立っている。

眼前に突きつけられるもの。

企図した訳ではないが結果そうなってしまったもの。雄としての本能的生態反応。

(呪うのは誰?)

(ベッド選んだの誰よ?)

(それって、アタシぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ…っ!?)

思考停止5秒間

再生復帰5秒間

見詰め合う事2秒間

悶死寸前10秒間

「…あ、イヤ、これはその……あ、あのさ、お布団に入らない?」

先に再構築に成功したのはシンジ。当面の打開策をひねり出す。

「………」

『お布団に一緒に入る→アタシの布団はシングルサイズで狭い→当然お肌の触れ合い』
回りすぎる頭は時として不幸である。この程度なら誰にでも容易に想像できるが。

「は、はずかしいから…ねっ?ねっ?」

彼女が硬直しているのを自分の所為だと(とも言い切れないが)思い込み、その原因を取り除くべき行動を必死にお願いするシンジ。
彼は完全な意味で精神的再構築=平常状態へと戻ってはいなかった。彼が求めているのは結果として次のフェーズへの移行であるのだから。

「…シンジ…」

俯き、そしてゆっくりと立ち上がるアスカ。幽鬼の如く、と言うと的確だろうか?

「…うん…」

犬の如く…彼に尻尾があったらそれは確実にぱたぱたと揺れていただろう。何を思ったのかは彼のみぞ知る事だが。

「馬鹿、馬鹿、えっちぃーーーーー!!」

炸裂するのは右拳。
綺麗な握りと腰がはいった完璧な拳打。
正確にシンジの鳩尾に決まる。対人用の格闘訓練を受けているアスカにとっては当然の事―であっても―

「げふっ…」

今まで喧嘩すらマトモにした事のないシンジには強烈過ぎた。

「はぁはぁはぁはぁ…へ?ちょ、ちょっと…ちょっとぉ、シンジぃ」

まさかこんなに綺麗に決まってしまうとはアスカは思わなかった。
それだけにベッドに突っ伏して悶絶しているシンジが信じられない。
抱き起こして少し心配そうに顔を覗くと。

「う…だって、、アスカが言ったんじゃないか…アスカが…アスカぁぁぁぁっぁっ!!!」

間近に見えるアスカの胸。そして少女特有の甘い匂い。
視覚と嗅覚への攻撃はシンジの思考を腐りかけた飴色に塗り替えた。

「あ…あはははは…ね?落ち着きなさいよ、シンジ…ね?」
「アスカ…アスカ、あすかぁあぁぁっ!…はぁはぁ…」

アスカの控えめな説得なんてぜんぜんシンジには効かない。
バカ(でしかも鈍感かつウブな)シンジでもやはり男性だった、とアスカは少し後悔しながら後ずさる。

「ちょ、ちょっキャ―――っ」

押し迫ってくるシンジから逃げようと後ろに下がるがそこはベッドの端。
下がるに下がれないアスカは今にも襲ってこようとしているシンジに身構えて悲鳴を上げた。

「…アスカはボクの事キライ?」

神妙な声に恐々とアスカはシンジの顔を見る。
シンジは真剣な眼差しでアスカを見つめていた。

『何よ、そんな顔で』

シンジの真剣な表情にアスカはドキリとさせられる。
そしてそれをシンジに悟られないためにいつものように平静を装った。

「な、何よ…いきなり」
「すス…す…す……」

熱と衝撃による暴走が幾分収まってきたシンジは今度はオーバークール状態に陥り始め、固まりだす。

彼のような動作状態のPCは絶対にいらない。操作不能に熱暴走、冷却と同時にフリーズ、再起動したくなるよなクズマシン。


ふと、アスカはそういった下らない思考を思いつく。

こんなダメマシン、アタシ以外に誰が御し得るのか。


「すっ…っす…」

 


やっぱり肝心なところで止まりそうになる。何が言いたいのかは解っている。

 

ここで『酢だこ』でも言おうものなら持てる技総てをもって彼を闇に葬り去って、すっきりした気持ちで安眠を貪ることも出来るのだが…

それでは今までと同じ日常の繰り返しになってしまう。

シンジの口からはっきりと言わせなければ意味がない、とアスカは考えている。

いくら甲斐性なしでも告白ぐらいは自分からしてほしい。

 

アスカが自分から告白するなんて事態はアスカの辞書には存在していない。

 

 

「す…す? す、何なの?」

完全に理性とイニシアチブを取り戻したアスカはシンジの頬に手を当て、自らと正対させると共に、その瞳をまっすぐに見詰め返す。


 

「す…っす…」


「なによっ」
「あっああっ、あの…ボクは。その…」

恥ずかしそうに俯くアスカ。
シンジはアスカに何らかの態度を示さなければいけないと思う。思いはしても、告白などしたことがない。
初めての事故シンジの性格ではなかなか踏ん切りがつかなかった。

「……馬鹿」

解っているからこそ言いたくなる一言。
でも、アスカはぐっと堪えシンジに聞こえないように小声で呟いた。

『そのバカさ加減がよいのかもしれないけどね、こんな唐変木、アタシ以外誰が相手にするのかしら?』

苦笑しかけた時、頭の隅に紅の瞳の少女が浮かぶ。

『嫌・・・嫌よ、何ももしない奴なんかに譲らない、私の気持ち譲ってたまるか』

シンジは心のどこかでからかわれているんじゃないかという気持ちが最後の一言を言えずにいた。
頭のなかが「告白」で一杯だったためアスカの様子に全く気付いていない。

「あ・・・・・アス」

笑ってごまかそうとしたシンジはアスカを見て、言葉を途中で飲み込んでしまった。

『不安なのは自分だけじゃない』

傷付くことを怖れていては前に進めない。
それでも前を向いて進んでいくアスカ。
彼女の笑顔にどれだけドキリとさせられたか。
気付くといつのまにかアスカを探している自分がいた。
自分の気持ち、アスカの気持ち。

 

目を瞑って深呼吸する。 
そして、再び瞼を開く。

さっきまでと明らかに様子が違った。 シンジの目には強い意志が宿っている。

「…好きだ…」
「あ…」

優しく抱きしめるシンジ。
好きという言葉と共に心にわき上がる想いをアスカに伝えたかった。
そして抱きしめられたアスカはなんだか嬉しくて、その言葉が聞きたくて思わず涙ぐんでしまう。
どれぐらい抱き合っていたのか?長い間だったのか?一瞬だったのか?
名残惜しそうにシンジはアスカから少し体を離し、優しくベッドの上に寝かせる。

「アスカ…」
「シンジ」

真剣にシンジの黒い瞳を見つめ返す。
アスカの首に腕を回し、碧紺の瞳を見つめ…自分の瞳を閉じてそして距離を縮める。

「ん…」
「ん…」

頭の先まで突き刺さる快楽。
シンジの柔らかい唇が荒々しくアスカを求める。
この前とは違う、本当に求めた口付け。

「シンジ、シンジぃ」

唇の先に感じる優しく暖かな想いを感じ、溶けて行きそうになるアスカは唇を離して愛する人の名を呼ぶ。

「アスカ…」

首に回していた腕をそのまま腰まで滑らせ、今度はアスカそのものを引き寄せ、そして力を込めて抱き占める。

「好きだよ…アスカ、アスカ…」

甘い言葉、求めていた存在、欲しかった温もり。
心の壁を超えてやってくる本当の気持ち。

「あ…あああ…」
「……」

言葉にならないアスカの唇を塞ぐことで応えるシンジ。
堪えきれない想いが涙となって流れる、シンジの温もりを感じながら。
初めて感じた愛する人の温もり。
シンジが気を遣いながら抱きしめてくれるのが良くわかる。

「ん…はぁ…」
「ねぇ…シンジ…御願い…」
「あ……」
「優しく……………………………………………して…」

 

それが精一杯の言葉。
トロンと溶けたような濡れた瞳がシンジを欲する。
意味を解したシンジは横たえたアスカの背中に手を回し、Tシャツをたくし上げる。

「あっ」

恥ずかしいと感じる心が口から漏れる。
しかしアスカは羞恥心を押さえ込みシンジに全てを任せる。

「初めて、みた…」

照れながらシンジは呟き、自分を誤魔化す。
そして、その初めて見る肌に口付ける。

「ひぁっ」

シンジの口付けた所が敏感に反応する。
誰にも触れられたことのない肌にシンジを感じる。
そんな行為に驚きと暖かさとが入り交じる。

「ね、脱がせて…」

口付けを止めずにシンジはアスカにお願いする。

アスカは突然の申し出に少し驚くが小さく頷いて体を起こした。
名残惜しそうにシンジはアスカの肌から唇を離し再び2人は向かい合う。
アスカは高鳴る鼓動と頬が熱く火照る感じがし、落ち着こうと深呼吸する。
そして少しためらったように伸ばした手を止めるが意を決してシンジに触れる。
ゆっくりとシンジのTシャツをぎこちなく脱がせていく。
好奇心と恥ずかしさが入り交じるが少しずつ見えてくるシンジの体。
思わず息を飲む、頼りなさそうなイメージしかないシンジに初めて男を感じた  −女とは違う身体の作り-
ゆっくりとシンジの胸に頭を預ける。

「ねぇ…シンジ…」
「なに…?アスカ…」

そう言いながら、アスカの頭を髪の流れのそって撫でる。

「男なら…優しくしてよね」

甘えるように、ねだるように耳元で囁く。

「あ……うん」

シンジに跨ったアスカの上半身を引き寄せ、抱き占める。
そのまま腕を首筋に滑らせ、顔の向きを変えると頬に啄ばむようなキスをする。
あまりの快楽にされるがままのアスカ、口から漏れるのは吐息のみ。

「ん…はぁん」
「アスカ…」

首に回した腕をそのまま下に滑らせ、手先でアスカを感じ取る。

「ああん」

ぴくっと身体が跳ねる。

「…良い?」
「馬鹿…」

腕は動きを変えるとアスカの身体を被う最後の薄布に手を掛ける。
アスカはシンジの言葉に肯くことしかできなかった。
恥ずかしさと恐さで少し身体がこわばるがシンジに全てを預けた。
シンジはアスカの体の重みを感じながら背中に手を回すが初めて触るものだけにうまくはずすことが出来ない。
シンジが悪戦苦闘している事に気付いたアスカはシンジの手を握る。
そしてにこりと微笑んでから自分で背中に手を回し外した。
はらりと落ちる下着、アスカはあらわになった胸を恥ずかしそうにかくした。
シンジはアスカの手を外すことはせずに、そのまま上から自分の手を合わせ指を絡ませる。

「ねぇ…シンジ?」
「うん…」
「見たい?私の全て?」
「うん…」
「シンジも…ね」

恥ずかしそうに手をどけシンジにすべてをさらけ出した。

「ごくん」

薄暗くいとは言え淡い光でアスカの全てはシンジの瞳に写る。

「き、綺麗だ」
「馬鹿…」

さらけ出されたアスカの胸の膨らみは少女と言うよりも女性と言った感じがした。
同い年の少女達よりも女性を主張している大きな膨らみ。

鍛えられた身体には無駄な脂肪など一切ついていない。
無骨さを誘うような仰々しい筋肉もついてはいない。

あくまでも、完璧に。その世代のうちで最上であるために―
そのようににシンジの目には見える。

 

 

ドキドキしながらもアスカの全てを見たいと言う欲求の前に逆らえずついつい魅入ってしまう。
そんなシンジの視線にアスカは少し非難めいた目で抗議した。
それに気付いたシンジは恥ずかしそうに視線を外し、意を決して身につけているモノをすべて脱いだ。

男と女
初めて触れ合う他人

それが心地よい。

「シンジ」
「アスカ…」

アスカの身体の芯がじんわりとしてくる。

「御願い…一つに…ね…」

シンジはコクリとうなずくと、アスカの腰に手を回し、腰を被った布をゆっくりと下におろした。
横たわったアスカの両肩に腕を回して体を抱き寄せる。
腰を深く落とし、自らをアスカに最も近く、ゆっくりと、手繰り寄せる。
稚拙な手の動きであてがい、そして少しだけ触れ合う。

「アスカ…」

真剣な眼差しにアスカは真っ赤になりながらゆっくりとシンジに肯く。
そしてシンジの背中に手を回し密着するように導く。
少しずつ、ゆっくりと、アスカの導きに従い埋めていく。

「あ…ああああ」

他人を初めて受け入れるときの痛み。
まるで引き裂かれるような痛みがアスカの身体を駆けめぐる。
それでもアスカはシンジを離さない。

痛みに耐えるアスカを見たシンジは身体の動きを止めると髪を撫で、そして口付ける。

「好きだよ…アスカ・…アスカ…」

−甘く囁く言葉は媚薬−シンジの囁きがアスカの思考を甘く溶かしていく。

「あ…はぁ…ん」

ゆっくりとゆっくりと動き出すシンジに痛みを感じながらもだんだんと痛み以外の初めての感覚を味わう。
シンジは少しでもアスカの負担を減らそうと口腔の中で舌を絡ませる。

「ん…んんんっ」

少しだけ、アスカの身体を強く抱きしめる。
下腹部に感じるシンジがアスカの中で徐々に荒々しく動き出す。

「あん…ひゃん…はぁぁ」

知らない感覚に翻弄される。

痛みが吹っ飛ぶ。

脳味噌が吹っ飛ぶ。

総てが飛んでいく。

なんとか声を殺そうとするが押し寄せてくる感覚にもう耐えられない。

お互いを欲し会う行為は貪欲に続いていく。
アスカは引いては寄ってくる波のような快楽に我を忘れそうになる。
シンジは熱く締め上げられているような感覚に激しく抵抗する。

「シンジ、シンジ、ああ…」
「アスカ、アスカ、アスカ」

我を忘れるほどの快楽、ひたすら他人を求める行為。
まるで欠けたものを得るためにお互いを貪り合うように身体を重ねていく。
シンジの背中に手を回し強く密着しようとするアスカは破瓜の痛みはもうない。
シンジは動きにくい姿勢も気に留める事なくにひたすらアスカを求める。

身体は熱く反応し、心は味わったことのない快楽にドロドロに溶けていく。
もう何も考えられない、もう他には何もいらない。

「駄目、シンジぃ、あ…嫌ぁ…もうだめぇぇぇ…」

アスカの肢体がぴくぴくと小刻みに痙攣する。
シンジもアスカの感覚にシンクロするように高みに登っていく。

「あ、アスカァァァァッ」
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

感覚の変わった内部からの刺激に脳髄が瞬間に沸騰点に達する。
真っ白な世界に意識は飛んでいきのしかかってくるシンジの重みだけが現実を感じさせてくれた。
暖かさを身近に感じる嬉しさ、一つになれた幸せ。
もう、死んでも良いなんて言葉が浮かぶ。

 

 

 

2人はお互いに抱き合ったまま肩で息をしていた。
心地良い気怠さ、心地良い暖かさ。
アスカは目を閉じて……ゆっくりと目を開く。
目の前には夢中で愛を貪りあったシンジがぐったりとした様子で覆い被さっている。

「ふふ」

なんだかおかしい。
体を重ねただけでどうしてこんな風に思えるのだろう?
今まで自分を支えてきた「心」がこんなに軽く感じるのはなぜだろう?
それは…。

「どうしたの?」

何が可笑しいのだろうか?と思い、怪訝な顔のシンジ。

 

「ねぇ…よかった?」
小声で甘く、囁くように耳元でアスカが呟く。

「よ、良かったって…」
その言葉に思わず体を起こし真っ赤になり、俯くシンジ。自分がした事を思い出すといても立ってもいられない。


最も繋がったままである事に気づいていないのは…仕方が無い。
妖しく微笑むアスカはシンジの重みを楽しみながら耳元で囁く。

「シンジと一つになれて嬉しい」

刹那にシンジの顔中の毛細血管が破裂する。

「……うん…ボクも……」

小さく、呟くしか出来ないシンジ。
アスカはシンジの頬に手を当て改めて口付けする。

「好きよ、世界で一番」
「………………」
「私の馬鹿シンジ」

赤くなって焦点の合わない目で自分の胸元を見ているシンジにアスカは微笑んだ。
もうアスカの脳裏に紅い瞳の少女は居ない。
心も体も結ばれたアスカにはシンジに対する不安が消えてしまっていた。

『さよなら、弱虫な私』

そんなことを考えているとは全く思いもしなかったシンジはアスカにリードされている自分が悔しくてお返しとばかりにアスカの唇に優しく口付けする。
突然のシンジ行動に驚くアスカはそれでも暖かさを感じるためにギュッと抱きしめる。
ドキドキと鼓動は高鳴るがもうお互いに受け入れたのだ。
恐れることはもう必要ない、少し名残惜しい気持ちに踏ん切りを付けてシンジから少しだけ離れた。

「ねぇ?シンジ」
「うん?」
「…お腹空いた」

ぺろっと舌を出して微笑む。

「はは…何が食べたい?」

苦笑したシンジだが、その顔は明るい。

「私の大好物!!」

シーツをたぐり寄せて身体に巻き付けたアスカは嬉しそうに微笑む。

「記念日だから…?」
「……………バカ…」

やっと、やり返す事が出来たシンジはにまぁっっと笑う。対してアスカはそんなクサイ事をさらりと、言われ照れてしまい、他所を向く。

「記念日だけど、ハンバーグを作ろう」

 

特別じゃないから。
特別な人だけど、特別じゃないから。

何故なら、ずっと二人でこうしていたいから。

だったらそれはいつもの事で、特別じゃないから。

だから、いつもと変わらない、はんばーぐ。

 

 

微笑むと、タンスから真新しい下着とTシャツ、そして床からバミューダパンツを拾い上げ、身に付けると部屋から出るために扉をあける。

 

 

 

 

「うん、楽しみにしてるわ」

シンジの心を汲んだアスカはシンジに向きなおし―ベッドから立ち上がり―

 

 

 

 

 

シンジに背中から抱きつき、その頬に口付けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

fin

 

 

 

 

 


Postscript #1

(writen by PatientNo.324)

 如何でしたでしょうか? 「つか、アンタバカっ」とキーボードを殴るもよし、煙草を一服するもよし(20歳以上のみ)。毒電波にお付き合い戴き、誠に有難う御座いました。
 元々は野上さまがチャットで一人ごちだした電波(失礼!)にアタシが乱入したことから出来上がったこの作品。
難産でした。ええ。公開時点でリビジョン1.3です(笑)
 アタシは基本的に「電波発散人格崩壊つーか誰か生き残ってんの?」の世界が住処ですから(TENさまが苦手とするジャンルっすね ^^;)、甘ったるいのは苦手です。それでも完成にこぎ付けたのは一重に野上さまのお陰で御座います。どうも有難う御座いました。

 #二度とやりたくないね、甘甘わ。たれまくるのは実生活で十分だ。

追記:TENさん、アスカさんwithメイド服はもーちょっと(つか、かなり^^;)待って(汗)

Postscript #2

(writen by Makoto Nogami )

どうもです、電波人間野上まことです。
なんでこんな事になったのかわかりませんがここになぜか書いてます(笑
アスカとシンジ君の初体験はいかがでしたでしょうか?

電波ですね(笑)まあ、なーーんにも考えず読んでいただければ
楽しんでいただけると思います・・・・・たぶん(笑

患者さんの実生活は更に甘いそうですが、野上の場合は・・・・・ヒミツです(笑

 

 



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